2009年12月31日

天皇の特例会見 誤解招かぬ慎重さを

 明日来日する中国の習近平国家副主席と天皇陛下の会見が15日に行われることになった。

 天皇が胡錦濤国家主席の有力後継候補とされる習氏と会見することは日中親善の観点から意義のあることだろう。しかし、今回の会見は、1カ月前までに申請するという通常の手続きを経ずに首相官邸の意向を押し通す形で決定され、これに宮内庁の羽毛田信吾長官が不快感を表明するという異例の事態となった。

 憲法に定められた象徴天皇の国事行為にかかわる問題だけに遺憾である。鳩山内閣の不手際と言わざるをえない。

 天皇と外国要人の会見を設定するには1カ月以上前に内閣を通した申請が必要とされる。この「1カ月ルール」は1995年ごろから慣例化され、天皇が前立腺がんの手術を受けたあとから厳格に適用されてきたという。天皇の年齢や健康に配慮してのことだ。

 今回の場合、外務省を通じて最初の打診があったのは11月26日という。羽毛田長官によると、その際は「応じられない」と回答したが、その後も2度にわたって平野博文官房長官から要請があり最終的に了承した。要請の際、平野氏は「日中関係の重要性」を指摘し、最後には「鳩山由紀夫首相の指示」による要請であることを強調したという。

 天皇と外国要人の会見は憲法に規定された国事行為で、内閣の助言と承認に基づいて行われる。これに照らせば首相官邸の要請によって会見が設定されたこと自体は越権行為とは言えないだろう。

 会見設定の背景には、日中関係を改善・発展させたいという中国側の強い意向があるとみられる。それを受け、米国とともにアジアとの関係を重視する鳩山内閣が会見実現に動いた事情も理解できる。

 ただ、今回の対応で懸念されるのは、政府内で慣例となっている1カ月ルールを外しての会見設定が天皇の政治利用につながるのではないかとの印象を与えかねないことだ。

 1カ月ルールが政府内の事務的な取り決めであるのは確かだ。鳩山首相は「諸外国と日本との関係を好転させるためで、政治利用という言葉は当たらない」と語っている。内閣が掲げる「政治主導」とは相いれないと考えているのかもしれない。

 しかし、「(会見設定は)国の大小や、政治的に重要かどうかなどにかかわりなくやってきた」(羽毛田長官)との指摘にも留意する必要がある。一度のルール逸脱が今後、時の政権によって恣意(しい)的に拡大される余地を残してはならない。天皇の特例会見は内外の誤解を招かぬよう慎重になされるべきである。
posted by hiro at 11:59| 大手新聞社説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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